禁止された「異端の教義」に対してのみ貼られるはずの「邪教」というレッテルが、「普通の」家庭教会にも適用されるケースが増えてきている。
政府の統制を受けていない、海外とつながりがある、多数の信者がいる、積極的に福音を伝道している、禁止されている精神的な本を読んでいる。中国最大の 家庭教会 の特徴である、こういった事柄は、政府が激しく抑圧しているいわゆる 邪教 グループの特徴でもある。中国に関する英語の出版物は邪教を「Evil Cult(邪悪なカルト)」と誤訳しているが、「異端の教義」と訳した方がより正確である。理論的には、「異端」で禁止される教えは政府が決定することになっていて、これは明代からの慣行である。中国共産党 がある宗教を 邪教リスト に含めた場合、その宗教は邪教となる。
けれども 習近平 の中国にあっては、宗教に対して遍く敵意がむき出しにされているため、行政は法規の範囲を超えて行動している。邪教というラベルは、邪教リストに含まれていない団体に対しても使用されることが増えてきている。
中国北東部吉林 省 の若手の役人が、その管轄下にある村民を対象に、WeChatグループに次のような告知文を投稿した。「現行政府は神を信じる者を逮捕するのに多大な努力を払っており、家庭にある十字架はすべて撤去対象となる。[宗教が]許可を取得していない場合、邪教として指定され、その集会に参加することは許されない」。
「許可がないと邪教になるのでしょうか」と村のキリスト教徒は互いに疑問をぶつけあった。「すべての家庭教会が邪教になるのでしょうか。政府の判断基準は正確には何ですか」。
政府を暗に批判し、政府指導部を受け入れない場合、それは個人またはグループが反党および反政府であるというのが、中国当局者の考えだ。これらは邪教が持つ標準的な特徴でもある。
2018年に注目を集めた、非公認の2つの教会が閉鎖されたケースから、許可を受けていない教会すべてを邪教としてレッテルを貼る傾向が垣間見える。北京錫安教会と、成都秋雨聖約教会のケースである。閉鎖前に公式調査を受けている際、北京錫安教会の信者は、警察が教会を「反党、反政府、政治的に誤っており、さらに邪教だ」と主張したと報告している。同様に、成都秋雨聖約教会で逮捕されたキリスト教徒は、警察は「違法な教会、さらには邪教組織」に参加したとして彼らを非難したと伝えている。
サンフランシスコを拠点とする華人基督徒公義団契(Chinese Christian Fellowship of Righteousness)のフランシス・リウ(劉)牧師は、 次のように語った。警察は逮捕した人たちに対して、自分たちの教会は違法な教会であり、その宗教が教える信条が間違っていること、そしてその組織は邪教であることを伝えているという話を方々から聞きました。それが政府に不利であるか、それが組織化されていて政府の支配に脅威を与えるものだと信じる限り、政府はそれを邪教として分類します」。
中国の多くの家庭教会は、北京錫安教会と成都秋雨聖約教会と同じ苦境に直面している。いくつかの教会は、所有する施設または借りている施設を礼拝目的に使用するための「許可を取得していなかった」、「政府が言うことに耳を傾けなかった」、または外国とのつながりが疑われるという理由から、邪教であると見なされた。
2018年5月以来、中国中部河南省唐河 県 の大賛美家庭教会は、集会を中止するよう繰り返し命じられてきたが、女性の説教者は従うことを拒んだ。
8月、政府職員は、教会が完全に空になっていなければ、その教会を壊すと脅した。そしてそれは違法な集会所であり、教会は邪教であり、国家によって許可されていないものは排除しなければならないと主張した。9月11日、政府は集会所を壊すために100人以上の人員を派遣した。
その後、説教者は逮捕されて2回尋問を受けた。警察は、彼女が外国人と連絡を取っていたか、教会の指導者は誰かと彼女に問い詰めた。警察は、外国人と接点があれば、それはスパイ行為を働いたのと同じことだと主張した。
何人かの信者は、説教者が「不従順」であったことが、彼女が「邪教」を運営していてスパイとして活動していると政府が非難する引き金を引いたと考えている。「中国共産党は、実際に法に触れたかどうかは問いません。彼らに従わなければ、その者を罰する方法を見つけるだけです」。
中国南西部重慶 直轄市 銅梁 区 にある使徒家庭教会の集会所も、「邪教」を崇拝する場所と見なされた。2018年4月、20人以上の政府職員が集会所に侵入し、それが邪教の違法な集会であると断言し、さらに今後は軽微な違反でも15日間拘禁し、重大な違反があった場合は懲役刑に服することになるとした。
「政府職員は、礼拝所が許可を取得していれば、それは正統なキリスト教で、許可がない場合は邪教だと言います。そんな主張がまかり通っていいのでしょうか」と教会の関係者はやりきれない気持ちを口にした。「私の名前はすでに邪教組織に所属する人物としてリストされています。牧師も行動の自由がありません。牧師は3日ごとに区域の管理者に報告しなければならず、また監視対象になっています」。
識者の中には、家庭教会が邪教としてレッテルを貼られるようになったのは、2014年のいわゆる マクドナルド殺害事件 以降であると見る者もいる。その事件では、山東省招遠市のマクドナルドで、客として訪れていたある店の販売員が殺害され、中国政府は全能神教会に殺人の濡れ衣を着せた。その後、政府はその事件を反邪教キャンペーンの宣伝として利用した。
中国共産党政府は、政府が「嫌いな」家庭教会や、組織の規模が大きくなりすぎたり、政府を批判したり、外国組織と接触したりして「一線」を越えた家庭教会を邪教であるとして排除するのではないかと、信者らは憂慮している。
評論家の郭宝勝(グオ・バオシェン)氏は以前、家庭教会が邪教とレッテルを貼られることに対して次のように警鐘を鳴らした。「(前略) 当局は将来、家庭教会、特に地方の家庭教会を扱う際、それらを邪教であるとして、罪人であるかのように扱っていくようになるでしょう。中国反邪教協会(または 中国反カルト協会)が公開した20の異なる邪教団体のリストのうち、15の団体はキリスト教と関連付けられています。これら15の団体が持つ一定の特徴に基づくと、多くの家庭教会は容易に邪教として指定される恐れがあります。また家庭教会が自身とこれら15の教会との間に明確に境界線を引くことは非常に難しいでしょう。(中略) その家庭教会が 三自教会 に加入していない限り、それは邪教としてレッテルを貼られ、中国 刑法第300条 に基づき処分される可能性があります」。
姚長進による報告