忠実な社会主義者になるため、幼稚園から大学に至るまで、中国の若者は習近平主席の演説と共産党の政策を学んでいる。
2018年3月、中国の全人代は習近平主席による新時代の中国の特色ある社会主義思想を憲法に正式に加える修正案を採用し、「習思想」を強制的に学ばせる取り組みを立ち上げた。悪名高い「学習強国」アプリから昨年8月に中国中央電視台で放映された「「平」の言葉を国民にとって身近な存在にするために: 習近平主席の辞典」等のテレビ番組もその一部である。
1年後の2019年3月18日、北京で思想及び政治理論の教師のためのシンポジウムが行われ、習近平 主席は 中国共産党 の指導者を支える才能ある世代の育成の必要性を強調し、まずは学校と子供たちから着手しなければならないと話した。
「共産主義思想の遺伝子」を複数世代にわたって伝えていくため、現在「習思想」の学習が小中高等学校および大学で義務付けられている。
若い世代に向けた平の言葉
中国南東部、江西 省 の全ての教育機関では(幼稚園から大学に至るまで)、特別に作成された教科書に沿って授業が進められる「共産主義文化コース」が導入された。
2月、中国北部、河北省の衡水 市 の党委員会は管轄下の教育機関に対し、「習近平思想」を学校に導入することで、第19回中国共産党全人代の精神を実行するよう命じた。社会主義を忠実に引き継ぐため、生徒には『平の言葉を国民にとって身近にするために』、『習お爺様のお話』、『平の言葉の辞典』等の書籍や教育局が発行した書物の学習が求められている。
衡水市の党委員会のメンバー自ら学校を訪問し、活動の実施の検査と監督を行った。検査に応じるため、一部の学校は特別にクラスを選び、『平の言葉を国民にとって身近な存在にするために』の内容を暗唱させていた。
4月4日、河北省の隣の山西省の陽泉市のある学校では「世代から世代へと共産主義の遺伝子を引き継ぐ」をテーマとした活動が行われた。生徒は習主席の書物を学習し、「新しい思想」を学んで、中国の社会主義の「適切な後継者」になることが求められている。生徒は「常に党に従い」、習近平主席の 社会主義核心価値観 を実行に移して、習主席が演説で話したように「人生の一つ目のボタンを掛ける」よう教化されている。
この学校の教員は次のように懸念を述べていた。「文化大革命 が行われた時、毛沢東 への愛と忠誠を示すため、紅小兵(選ばれた子供たちの集団)は「毛主席は紅衛兵の司令官。私たちは毛主席の紅小兵」というスローガンを叫んでいました。現在、学校の生徒たちは「習思想」を吹き込まれています。これは文化大革命時に紅小兵が、毎日毛沢東主席の発言を学習していたことを彷彿とさせます。この取り組みが続き、新しい世代の紅小兵が生まれるのでしょうか?」
陽泉市の学校に通う少年は、学校の生徒全員に対して、「山西青年」(SNSのWeChat上のプラットフォーム)で個人情報を入力し、アカウントを作ることが命じられたと話した。この「山西青年」で、生徒たちは、習近平主席の一帯一路構想や貧困緩和等の政策を動画の視聴やクイズを通して学ぶ。
「学校は動画を視聴している生徒の人数を記録しています。学習を怠った場合、成績だけでなく、学位の取得にも影響します」とこの学生は力なく語った。
指導する教員たち
共産主義の後継者を作る政治運動において、思想管理の主なターゲットになるのは、当然教員である。
3月4日、陽泉市平定 県 の教育及び科学局は、管轄内の全ての学校の教員に対し、「学習強国」アプリをダウンロードし、習主席の演説を学ぶことで「若者学習」活動を指南するよう要求した。また、教員は学習から得た教訓に関して5,000字の小論文を書かなければならなかった。
2週間後、平定県のある中学校は教員を集め、「改革開放政策40周年を祝う習近平主席の演説」を研究し、中国の現在の改革と革新について話し合った。各教員には学習に基づく3,000字以上の小論文を書くことが求められ、従わない場合は上級の当局に通告すると脅されていた。
ある教員がこの「学習会」について次のようにコメントした。「習近平主席の演説は意味不明で誇張が目立ちます。主席の演説から得た教訓について小論文を書く行為は、はっきり言って学校の紙の無駄づかいです。教員に対する負担が増え、授業が遅れてしまいます」。
別の教員は、学校の主な任務は教育であるにもかかわらず、政府は大規模な政治運動を行っていると述べた。さらにこの教員は「教員と生徒も巻き込まれます。本当に文化大革命のようになってきました」と話した。
沈心然による報告